日立・MOL・JALが沖縄・久米島で日本初の直接海洋回収パイロットテスト実施に向け覚書を締結
重要ポイント
- •日立、MOL、JALは沖縄・久米島で日本初の直接海洋回収パイロットテスト実施に向けMOUを締結。陸上のコンテナ型設備を使用し、取り込んだ海水からCO2を抽出する。
- •3社はいずれも米国のDOC技術開発企業Captura Corp.に出資しており、同社の技術の日本国内展開の可能性を共同で検討してきた。
- •DOC技術は、海水中のCO2濃度が大気中の約100〜150倍であるため、直接空気回収(DAC)よりも低コスト・低エネルギーで効率的である可能性があるとされる。
- •3社は、回収されたCO2がE-SAFを含む合成燃料の原料として活用される、国内自給型の島型炭素経済の確立を目指している。
- •日立は計測・データ分析およびフィジカルAIを用いたMRVプラットフォーム開発を主導し、MOLは久米島での地域ステークホルダー調整を担当、JALは啓発活動を主導するとともに将来のE-SAF調達の可能性を評価する。

日立・MOL・JALが沖縄・久米島で日本初の直接海洋回収パイロットテスト実施に向け覚書を締結
日立株式会社、商船三井株式会社(MOL)、日本航空株式会社(JAL)は、直接海洋回収(DOC)技術を活用した日本初のパイロットテストを実施するための覚書(MOU)を締結しました。DOCは海水に溶存するCO2を直接分離・回収する技術です。テストは沖縄県久米島で実施されます。本取り組みは、日本が2050年カーボンニュートラルという国家目標を追求する中で、工学的アプローチによる炭素除去が排出削減に不可欠な補完手段としてますます認識されている状況を背景としています。
パイロットテストの概要
3社は、久米島周辺の海水を用いてDOC技術の適用性を確認するとともに、日本沿岸での将来の展開に関連する運用上の課題や環境影響に関する基礎データを収集することを目指しています。テストでは、久米島の陸上に設置されたコンテナ型パイロット設備を使用し、海水を取り込んでCO2を分離します。
久米島ではすでに、海洋温度差発電(OTEC)など、地理的条件を活かした先進的なパイロットプロジェクトが進められています。同島は海洋研究の専門知識と人材が集積しており、日本初のDOCパイロットテストの実施場所として最適な環境を備えています。
本プロジェクトで得られた知見に基づき、3社はDOC技術のより幅広い応用と展開を検討します。具体的には、回収したCO2の地元での活用や、本パイロットテストを中心とした啓発・環境教育プログラムなど、新しい海洋ベースの経済価値(ブルーエコノミー)の創出に貢献することを視野に入れています。
背景と目的
海運や航空といった「アブートが困難な」セクターでは、電気化のみでは排出削減が容易でないため、オフセットが企業の直接削減努力に不可欠な補完手段として位置づけられています。世界的な輸送需要の増大が続く中、CO2除去技術は不可欠なツールとしてますます重視されており、CO2を直接的かつ工学的に抽出する技術の確立が急務となっています。
また、海外からのカーボンクレジット調達コストの将来の抑制という観点からも、国内の除去エコシステム構築の重要性が高まっています。これは、輸入エネルギーやカーボンオフセット供給に大きく依存する日本にとって特に重要な課題です。3社はそれぞれの出資子会社等を通じて、米国のDOC技術開発企業であるCaptura Corp.に出資しています。各社の専門知識を活かし、Capturaの技術の日本国内展開に向けた国内パイロットテストの実現可能性を共同で検討してきました。
3社は、本パイロットを、回収されたCO2が最終的にE-SAF(電気合成航空燃料)を含む合成燃料の原料として活用される、島型・国内自給型の炭素経済確立に向けた第一歩と位置づけています。
DOC技術の仕組み
DOCは海水からCO2を直接除去する手法です。自然状態では、海水は大気中のCO2濃度と平衡に達するまで炭素を吸収します。海水からCO2を人工的に抽出するとこの平衡が破壊され、海洋は不足分を補うために大気からさらなるCO2を吸収します。このサイクルを繰り返すことで、海洋を媒体として大気中のCO2濃度を効果的に低下させることができます。
海水中のCO2濃度は大気中の約100〜150倍です。DOCは、比較的低コスト・低エネルギー消費でCO2を回収できる可能性のある有望な気候変動対策として広く期待されています。このより高い濃度勾配は、大気中の空気を処理する直接空気回収(DAC)との重要な差別化要因です。DACはCO2が約0.04%の濃度で存在する大気を処理するため、1トンあたりの回収に著しく多くのエネルギーを必要とします。DOCは、国際的な投資と政策的関心が高まっている海洋二酸化炭素除去(mCDR)というより広範な新興分野の一部です。
3社の役割
日立: 経営計画「Inspire 2027」の下、日立グループはサステナビリティ戦略PLEDGESを策定し、本イニシアチブを主導しています。日立ハイテク株式会社の先進的な分析装置および特性評価手法を活用し、日立は運転状況ならびに海水の溶存無機炭素(DIC)やpHレベルを含む水質・環境データを測定・記録します。このデータを分析し、インサイトを直接プラント運転にフィードバックするフィジカルAIを実装することで、日立は高いエネルギー効率を実現する運転条件の特定と制御を目指します。さらに、回収したCO2量と消費電力のデータを記録・検証することで、高い信頼性を有するカーボンクレジットを生成するためのMRV(測定・報告・検証)データプラットフォーム構築に貢献します。日立産業機器株式会社は、商用規模プラント向けの中核機器の提案・供給に関する検討を推進します。「One Hitachi」の協創フレームワークを通じて、グループ全体で日本発のインテリジェントなDOCモデル確立を目指します。
MOL: MOLグループは、グループ経営計画「BLUE ACTION 2035」の下で環境戦略を重要施策に位置づけ、海を基盤とする社会インフラ企業として脱炭素化を推進しています。本パイロットでは、MOLは沖縄県久米島町との包括的連携協定を通じて構築した地域基盤を活かし、地域ステークホルダーとの協力関係を構築し、パイロット環境を準備します。得られた知見に基づき、MOLはDOC技術の普及拡大と、久米島における新たな地域ビジネスおよび地域イニシアチブの創出に貢献することを目指します。
JAL: 「JALグループ経営ビジョン2035」の下でのグリーントランスフォーメーション(GX)戦略の一環として、JALグループは二酸化炭素除去(CDR)技術を重要施策に位置づけています。本パイロットでは、いずれも久米島への便を運航している日本トランスオーシャン航空株式会社および琉球エアーコミューター株式会社とともに、JALは地域パートナーシップを活かして啓発活動を主導し、航空業界の内外でDOC技術の認知向上を図ります。また、JALは回収したCO2から製造されるE-SAFの将来的な調達を見据え、DOC技術の有用性を評価します。
出典:商船三井