Fed議長ウォーシュのジャクソンホール講演がトランプ大統領との経済政策対決を招く
重要ポイント
- •ケビン・ウォーシュは8月28日、カンザスシティ連銀がワイオミング州で主催するジャクソンホール・シンポジウムで、Fed議長として初の主要講演を行った。
- •ウォーシュは長年続いてきたフォワードガイダンスの慣行を批判し、市場を過度に依存させデータに基づく金利判断を妨げていると主張した。
- •ウォーシュはFedのデュアルマンデートのうち雇用よりも物価安定を重視し、65か月続いた高インフレの責任は中央銀行にあると述べた。
- •8月に国債が40兆ドルを超えた後、ベッセント財務長官が債券買入れで長期金利を引き下げようとした試みは失敗し、ウォーシュの発言はこれへの批判と受け止められた。
- •専門家はウォーシュの講演を利上げのシグナルと解釈しており、利下げを公然と要求してきたトランプ大統領との対立が懸念される。

先週金曜日、新しく就任した連邦準備制度理事会(Fed)議長が行った講演は、政権内部で深まりつつある経済政策をめぐる亀裂を露呈させ、ドナルド・トランプ大統領との「衝突コース」に彼を据える可能性がある。これは米誌『ザ・アメリカン・コンサバティブ』の見方であり、同誌は火曜日、経済政策をめぐる争いが「正念場(ショーダウン)」に向かっていると論じた。(同誌の分析:At Jackson Hole, Warsh Set Up a Potential Showdown With Trump)
「ケビン・ウォーシュは8月28日、今年のジャクソンホール経済政策シンポジウムでFed議長として初の主要講演を行った」と同誌は書いている。この講演でウォーシュは「本人が望まないとしても、Fedの今後の方向性への手がかりを示し、おそらくトランプ大統領との衝突コースに自らを置いた」という。カンザスシティ連銀がワイオミング州で主催するこの年次シンポジウムは、Fed議長が金融政策の考え方の転換を示す場として長く機能してきたため、ウォーシュの発言は市場や論者から注視された。
フォワードガイダンスへの「宣戦布告」
同誌が詳述するように、ウォーシュは「フォワードガイダンス」との「戦争」に踏み出した。同誌はこれを「金融政策の動きを事前に大々的に予告することを指すFedの隠語」と説明し、過去20年間で定着した中央銀行の慣行だとしている。ウォーシュはこの慣行が「経済的に動揺した時期に市場の冷静さを保つことを意図したもの」だったと認めつつ、「市場がこの情報に過度に依存するようになり、その後の状況の変化にかかわらず中央銀行が予告した政策に縛られてしまっている」との見解を示した。
「先週ジャクソンホールで述べたように、フォワードガイダンスは実際には市場、企業、家計を誤った方向に導き、政策担当者がハードデータに基づいて金利判断を下す能力を妨げうる」と同誌は書く。フォワードガイダンスからの離脱は、投資家が当局者による金利 trajectory の事前シグナルを市場期待の定番と見なしてきただけに、Fedのコミュニケーション方式における重大な変化となるだろう。
金融市場とFedの適切な関係を築く必要性を強調し、ウォーシュは次のように述べた。「Fedには、市場内部からの情報として可能な限り濾過されていない明確な市場シグナルが必要だ。各セクターの資産価格の水準と変化、国債の価格と取引量、ドルの為替価値、信用のコストと入手可能性、そして幅広い商品の価格」
ベッセント財務長官への皮肉とも読める発言
『ザ・アメリカン・コンサバティブ』は「国債への言及には、スコット・ベッセント財務長官の最近の動きへの皮肉を見ないではいられない」と指摘する。「8月には国債が40兆ドルを超え、30年物国債利回りは約20年ぶりの高水準に跳ね上がった。政府資金調達に対する債務負担の増大が金利を押し上げている。買い手がデフォルトリスクを織り込んでいるためだ。ベッセントはこれらの長期債の一部を買い戻すことで、利回り曲線(短期債と長期債の利回りの差を示す、通常は右上がりの曲線)の長期金利を引き下げ、政府の借入コストを低減しようとしている」
同誌によれば、この試みは失敗に終わり、ウォーシュは今、「国債利回りという重要なシグナルを歪めること」に反対していることを明確にしている。このやり取りは、Fedの金融政策の権限と財務省の債務管理責任の境界线をも浮き彫りにしており、ウォーシュの発言はこの役割分担を明確に保つ意図を示唆している。
雇用より物価安定を
『ザ・アメリカン・コンサバティブ』は「ウォーシュはデュアルマンデートの雇用面よりも物価安定を重視する中央銀行の姿勢を引き続き強調している。ジャクソンホールでの講演では労働市場を『安定している』と特徴づけ、懸念が残る各種インフレ指標を掘り下げるのに相当な時間を費やした。彼は『65か月に及ぶ持続的な高インフレの責任は中央銀行にあり、それが当然だ』と繰り返した」と記している。デュアルマンデートとは、最大限の雇用と物価の安定の両方を追求せよとする議会からFedへの法的使命を指す。
金融専門家たちはこれらの発言を利上げが近い兆候と解釈した。これは、ウォーシュをFedのトップに指名した際にトランプが望んだものとは正反対である。『ナショナル・コンサバティブ』によれば、大統領は高インフレにもかかわらず利下げを推し進め、これまでのところ要求に応じない「非常に政治的な」Fed理事会を非難してきたが、「ケビンは素晴らしい」とも述べている。しかしウォーシュが予想通り利上げすれば、大統領の標的になりかねない。この緊張は、Fedの独立性をめぐる長年の論争を映しており、歴代大統領は低金利を好んできた一方、中央銀行は政策決定を政治的圧力から守ろうとしてきた。
一方で同誌は、「金利維持や利下げの擁護者を装うことは、市場における彼の信認を損なう可能性が高い」とも指摘する。
「インフレ強硬派としての資格を維持するには」と同誌は結んでいる、「ウォーシュは大統領を怒らせざるを得ないかもしれない」。