米国債利回りは小幅低下も、レンジ上限を試す動きが続く
重要ポイント
- •米国債利回りは小幅に低下したものの、直近のトレーディングレンジの上限を試す動きが続いており、住宅ローンや企業融資など借り入れコストのベンチマークとなっている。
- •スコット・ベッセント米財務長官が提案する40億ドル規模の満期シフト買いは、世界最大級の規模と厚みを誇る国債市場全体と比べれば取るに足らないと見られている。
- •当局はFRBにある財務省一般勘定(TGA)の活用を検討しているとされるが、同勘定は有限の現金プールであり、具体的な計画は存在しないように見える。
- •ロイターの世論調査ではトランプ氏の支持率が33%と政権発足以降で最低水準に並び、イラン戦争を支持する回答者はわずか31%、共和党支持者の29%が反対している。
- •今後の米国債入札は投資家の米国債需要を直接示すものとなり、利回りの4.75%超えは不吉、5%超えは壊滅的とみられている。

米国債利回りは小幅に低下したものの、直近のトレーディングレンジの上限を試みる動きが続いており、市場の関心は債券市場に釘付けになっている。その影響は国債そのものにとどまらない。米政府債の利回りは、住宅ローンから企業融資に至るまで経済全体の借り入れコストのベンチマークとなっているため、レンジ上限近辺に張り付いた市場は、家計にも企業にもその圧力を意識させ続ける。
その背景にあるのは、政府が市場と戦うという居心地の悪い状況である。同記事が指摘するように、こうしたアプローチにはある種の空しさがある。それが成功することはまれだからだ。たとえ成功するとしても、それは通常、マリオ・ドラギ氏――当時の欧州中央銀行(ECB)総裁――が2012年にユーロ防衛を誓った「whatever it takes(必要なことは何でもやる)」型の、劇的な行動を伴うものだった。歴史は逆方向からの教訓も示している。直近の例が2022年の英国「ミニバジェット」騒動で、財源の裏付けを欠く財政計画の発表を受けて金利付き国債(ギルト)の利回りが急騰し、計画が撤回されて初めて落ち着いた。いずれの基準に照らしても、スコット・ベッセント米財務長官が語る40億ドル規模の満期シフト買いは、記事の表現を借りれば「笑ってしまうほど火力不足」に見える。世界最大級の規模と厚みを誇る資産市場である国債市場全体の中では、端数に等しい金額だからだ。
当局は現在、財務省一般勘定(TGA)――米政府が連邦準備制度(FRB)に保有する口座――の活用も浮上させているが、実際には確固たる計画がないように見え始めている。その仕組みには留意が必要だ。この口座は政府が支払いのための現金を保管する場所であり、取り崩せば銀行システムに資金を供給することになるが、無際限に使える手段ではなく有限のプールである。こうしたパターンは、記事によれば、ドナルド・トランプ大統領の衝動性と、部下に達成が不可能かもしれない目標を課す癖に遡るという。
政治的圧力も重なりつつある。ロイターが発表したばかりの世論調査では、トランプ氏の支持率は33%と、政権発足以降で最低水準に並んだ。イラン戦争への不支持も強まっており、戦争を支持する回答者はわずか31%で、共和党支持者の29%が反対している。
債券市場が見て取るのは、負担能力をめぐってもがく大統領と、世論調査に迎合する共和党の姿である。データセンター政策の転換はその表れで、AIインフラ整備を推進してきた政権が、今度は急増する電力需要に疑問を呈するようになっている。
最終的な裁定者は債券市場自身であり、今後の米国債入札は米国債に対する投資家の需要を直接映し出す。利回りが改めて4.75%を上回れば不吉な兆候となり、5%を超えれば壊滅的だろう。ここから先、誤りの許容余地はほとんど残されていない。
出典:ForexLive