Mastercard、AIエージェント決済「Agent Pay for Machines」の先行アクセスを開放—ライブデモを実施
重要ポイント
- •Mastercardは、自律型AIエージェントが人間が設定した支出限度額の範囲内でデジタルサービスへの支払いを行えるシステム「Agent Pay for Machines」の先行アクセスを開放した。
- •同システムはx402オープンプロトコルを基盤とし、エージェントが生成するデジタル署名付きバウチャーをサービス提供者が検証してから有料サービスを提供する仕組みで、やり取りはマシンスピードでオフチェーンで行われる。
- •CloudflareのConnectカンファレンスでのライブデモでは、エージェントが単一の予算で広告キャンペーンのため2つの独立した加盟店に9件の支払いを完了させ、別途アカウントや請求書は不要だった。
- •決済インフラは、ウォレットにCoinbaseの開発者プラットフォーム、オンチェーン決済にイーサリアムレイヤー2ネットワークのBase、処理にBVNK(8月にMastercardが買収)を利用し、取引はGlobal Money Platformを通じて法定通貨またはステーブルコインで決済される。
- •ローンチに合わせて、Mastercardは買い手側・売り手側のAPI、開発者ツールキット、サンドボックスを公開。Cloudflare、Ant International、AWS、BVNK、Coinbaseとのエンドツーエンドのパイロットを経ている。

Mastercardは、自律型AIエージェントがサービスを発見し、条件に合意し、人間が設定した支出限度額の範囲内で支払いを行える決済システム「Agent Pay for Machines」の先行アクセスを開放した。同社はCloudflareの「Connect」カンファレンスでこのマイルストーンを発表し、Mastercardのジョーン・ランバート(Jorn Lambert)取締役がステージ上でライブ取引を実演した。
同社は6月にこのシステムの計画を初めて発表しており、今回のローンチにより、AIエージェントが自律的に取引するというビジョンをコンセプトから実証へと移行させた。発表からわずか数ヶ月で稼働するインフラへと進化した形だ。
Agent Pay for Machinesは、オンラインサービスが支払いを要求できるオープンプロトコル「x402」を基盤とし、Mastercardのネットワークと組み合わせている。この構想は、AIエージェントが高度化するにつれて顕在化しつつある問題に対応するものだ。エージェントは「経済的主体」となりつつあり、あるプロバイダーからデータを、別のプロバイダーからAIモデルを、さらに別のプロバイダーから計算能力を購入する必要がある。しかし現在の有料サービスは通常、プロバイダーごとにアカウント、APIキー、または請求関係を要求するため、エージェントがその場でサービスを選択する状況では成立しない。Agent Pay for Machinesは、この摩擦を解消するためのMastercardの取り組みである。
この仕組みの要点は、支払いそのものではなく権限にある。企業はエージェントにタスクと支出上限を与える。エージェントが「402 Payment Required」レスポンスを返す有料サービスに遭遇すると、承認された限度額内での支払いを約束する安全なデジタル署名付きバウチャーを生成し、サービス提供者はそれを検証した上でサービスを提供する。この設計により、経済的な主導権は人間が握り続ける。エージェントは行動するが、その委託者が承認した限度額の範囲内に限られる。やり取りはマシンスピードでオフチェーンで行われ、サービス提供者はバウチャーを一括して後日換金することもできる。
デモでは、マーケティング代理店Hypeのエージェントが、設定された予算でプロテインバーの広告キャンペーンを計画した。利用可能な登録済みプロバイダーを発見した後、エージェントは2段階の計画を実行した。あるベンダーによるSNSリサーチと、Cloudflare経由でのキャンペーン画像の取得だ。作業は単一の予算で2つの独立した加盟店への9件の支払いに及び、プロセス全体を通じて別途アカウントや請求書は一切不要だった。
舞台裏では、決済基盤としてCoinbaseの開発者プラットフォームがウォレットを、イーサリアムレイヤー2ネットワークのBaseがオンチェーン決済を、そして8月にMastercardが買収したステーブルコイン企業BVNKが処理を担い、取引はMastercardのGlobal Money Platformを通じて法定通貨またはステーブルコインで決済された。この仕組みにより、法定通貨とステーブルコインの決済が単一のフローに統合され、Mastercardの従来のネットワークがオンチェーン基盤と結びつけられている。
今回のローンチは、Cloudflare、Ant International、AWS、BVNK、Coinbaseとのエンドツーエンドのパイロットを経たものだ。先行アクセスの開放に合わせて、Mastercardは買い手側・売り手側のAPI、開発者ツールキット、サンドボックスを公開し、パイロット参加企業以外の開発者にもエージェント決済への実践的な参入口を提供する。
この発表は、同社がここ数週間で明かしてきたステーブルコインとエージェント決済への急速な取り組みの集大井となるもので、Stablecoin Securityリスクツールのローンチや、BVNKを活用したGlobal Money Platformが含まれる。これらのリリースを総合すると、x402を基盤とするプロトコル層、法定通貨またはステーブルコインによる決済基盤、ステーブルコインフローを対象としたセキュリティツールからなる、エージェントコマースのエンドツーエンドのスタックが描かれている。
出典:Decrypt