日銀の氷野氏、さらなる利上げを示唆し、上振れインフレリスクの高まりを指摘
重要ポイント
- •氷野氏は、日銀は政策金利を引き上げ続け、情勢に応じて金融緩和の度合いを調整すべきだと述べた。
- •同氏は、上振れする物価リスクをより重視し、基調的なインフレを2%前後に維持するよう求めた。
- •AI関連需要が、メモリチップ、精密機器、半導体製造装置などの分野で日本の輸出価格を押し上げていると指摘した。
- •円安は輸入コストを押し上げることでインフレ要因になっていると述べた。
- •日本は7月までに必要な原油のほぼ100%を代替経路で確保し、供給混乱への懸念は和らいだとした。

日本銀行の氷野良三副総裁は木曜日、埼玉県で地元の経済界に対し、日本経済の見通しについて強気の評価を示し、中銀は経済活動、物価、金融環境の動向に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整し続けるべきだと述べた。
氷野氏は、緩和的な金融環境は経済にとって引き続きプラスだとしつつ、日銀は条件に応じて政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整し続けるべきだと改めて述べた。日銀の2人の副総裁の一人として、氷野氏の講演は政策会合の間における政策委員会の考え方を示す手掛かりとして注目される。日銀は2024年3月、8年間続いたマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げを実施して以来、段階的に引き締めを進め、数十年にわたる大規模緩和を徐々に巻き戻してきた。
同氏は、これまで以上に上振れする物価リスクに留意し、過去以上に注意を払う必要があると述べた。インフレを目標まで押し上げることに長年取り組んできた中銀にとって、これは注目すべき姿勢の変化だといえる。基調的なインフレを日銀の2%目標近辺で安定させることが重要であり、目標を上回って乖離すれば経済に悪影響を及ぼすと警告した。
そのうえで、政策委員会はこうした点を踏まえて各会合ごとに政策を議論するが、金融政策が物価に波及するには時間がかかるとも述べ、アクセルやブレーキに対する反応が徐々にしか変わらないバスになぞらえた。
インフレの要因については、同じ方向に働く2つの力を挙げた。世界的なAI関連需要の増加が経済活動と物価の両方を押し上げているとし、メモリチップ、精密機器、半導体製造装置に集中した日本の輸出価格上昇に言及した。これにより、銅鉱山や訪日観光など幅広い分野に波及効果が及んでいるとした。日本は世界有数の半導体製造装置・材料供給国を抱えており、AIブームが日本の輸出価格に直接表れていると述べた。
また、輸入コストを押し上げる円安も、緩和的な金融環境が引き続き経済を広く下支えしている一方で、インフレを高める要因になっているとした。
氷野氏は、中東情勢についても言及した。これは、AI需要、円、金融環境と並んで現在の見通しを形作る4つの重要要因の一つだという。日本は消費する原油のほぼ全量を輸入しており、歴史的に中東から供給の大半を調達してきたため、この紛争は長年の脆弱性だったとした。そのうえで、供給網の混乱に対する以前の懸念は大きく後退しており、7月までに必要な原油のほぼ100%を代替調達経路で確保したと述べた。米国からの調達が大幅に増えたことも含まれる。
ただし、紛争は7月の緊張再燃もあり、経済活動には下押し圧力を、物価には押し上げ圧力を引き続き与えていると指摘した。
総じてこの講演は、早すぎる引き締めが景気回復を損なうリスクよりも、インフレが目標を持続的に上回るリスクを重視する日銀の姿勢を改めて示した。こうした重心の移り変わりは、今後数カ月の追加利上げ観測を維持する要因になりそうだ。