アマゾン(AMZN)株、FTC訴訟とAI投資の重圧で珍しい水準までバリュエーションが低下
重要ポイント
- •アマゾンの予想PERは約20倍まで低下し、過去5年平均の約60倍、10年平均の102.3倍を大きく下回っています。
- •FTCと22の州は8月31日にアマゾンを訴え、未公開の価格設定手法により2019年以降、約120万人の広告主に対し200億ドルを超える追加の広告費用が発生したと主張しています。
- •アマゾンはFTCの主張に異議を唱え、広告プラットフォームが参加事業者に価値を提供していると主張しています。
- •アマゾンは計算能力、データセンター、その他のAI・クラウドインフラを支えるため、2026年の設備投資予算を約2,200億ドルに引き上げました。
- •Evercore ISIのアナリスト、マーク・マハニー氏は、アマゾンの設備投資が2027年に約3,200億ドル、2028年に約3,700億ドルに達し、両年で年間約500億ドルのマイナスのフリーキャッシュフローになると推計しています。

Amazon.com, Inc.(AMZN)株は1.99%下落して254.74ドル(5.18ドル安)となり、テクノロジー・電子商取引大手の収益バリュエーションは数年ぶりの低水準に落ち込みました。人工知能(AI)とクラウドコンピューティング分野で拡大を続けるなか、同社の予想株価収益率(PER)は約20倍まで低下しています。一方、増加するインフラ費用と連邦広告訴訟が株価に圧力を加え、世界最大級のテクノロジー企業の不安定な取引期間が続いています。
バリュエーション、過去平均を下回る
AI企業への市場の関心が続くなか、アマゾン株は既往高値を回復できずにいます。株価は8月上旬につけた52週高値から約8.5%下落しており、テクノロジー株の多くの銘柄に比べ弱いパフォーマンスです。比較として、マイクロソフト株は同期間に52週高値から約4.2%下落しています。
Yahoo FinanceのAlphaSpaceによるデータでは、アマゾンの予想PERは約20倍となっており、過去の平均を大きく下回っています。予想PERとは、企業の株価を直近12カ月間の利益と比較する指標です。アマゾンの過去5年平均は約60倍、10年平均は102.3倍であり、現在のバリュエーションは、これまで収益成長とともに維持されてきたプレミムから大幅に低下したことを示しています。マーケット分析プラットフォームTrendSpiderも、アマゾンの利益倍率が数年来で最も低い水準の一つだと指摘しています。実質的には、投資家は現在、近年で最も低い水準となる1ドルあたりのアマゾンの利益に対する対価を支払っており、持続的な成長への期待から長年プレミアム評価を受けてきた同社にとって注目すべき変化です。
Anthropicへの投資に関連する利益がこの計算に十分に反映されているかについては、不確実性が残ります。こうした投資利益は、経常営業利益を直接改善することなく、報告される利益を増加させ、予想倍率を引き下げる可能性があります。今後の四半期決算では新たな利益が12カ月の計算期間に組み込まれ、この倍率の基礎となる数値が更新されます。
FTCの広告訴訟が株価に圧力
アマゾンはまた、小売プラットフォームの主要な収入源である広告事業をめぐる規制上の課題にも直面しています。広告は、マーケットプレイスでの露出を競う販売者にスポンサード表示を販売する同社にとって、収益への貢献度がますます高まっている領域です。連邦取引委員会(FTC)と22の州は8月31日、不公正な広告オークション慣行をめぐる訴訟を提起しました。規制当局は、アマゾンが未公開の価格設定手法を用い、同プラットフォームで販売する事業者の広告コストを引き上げたと主張しています。
FTCは、同社の慣行により2019年以降、200億ドルを超える追加の広告費用が発生したと主張しています。提訴の対象は約120万人の広告主に及び、スポンサード広告枠の価格決定方法が争点となっています。規制当局によれば、同社は通常の入札競争で決まる水準を超えるコストを生み出す価格設定メカニズムを導入したとされます。
アマゾンはこれらの主張に異議を唱え、広告プラットフォームが参加事業者に価値を提供していると主張しています。規制当局が価格設定慣行の変更を実現した場合、この法的手続きは重要な利益源に影響を及ぼす可能性があります。未解決のこの係争は、小売事業、クラウドの拡大、増大するインフラへのコミットメントのバランスを取るアマゾンにとって、さらなる課題となっています。この規模の訴訟は通常、長い期間をかけて申立、証拠開示、和解協議などを経て進行するため、係争の進展における短期的な注目点は手続き上の提出書類となります。
AI投資がフリーキャッシュフローへの懸念を浮上
大手クラウドコンピューティ事業者間の競争が激化するなか、アマゾンはAIインフラに多大なリソースを投入し続けています。同社は第2四半期の決算説明会で、2026年の設備投資予算を約2,200億ドルに引き上げました。これらの投資は、拡大するテクノロジー事業全体における計算能力、データセンター、その他のインフラ需要を支えます。
Evercore ISIのアナリスト、マーク・マハニー氏は、今後2年間でアマゾンの年間設備投資がさらに増加すると見ています。同氏の推計では、2027年に約3,200億ドル、続いて2028年に約3,700億ドルへと増加します。この見通しは、他の事業部門への投資を維持しながら計算インフラを拡大するための財務的負担の大きさを浮き彫りにしています。
マハニー氏はまた、2027年と2028年の両年で年間約500億ドルのマイナスのフリーキャッシュフローを予測しています。フリーキャッシュフローとは、企業が運営と資本投資を賄った後に残るキャッシュであり、財務の柔軟性を測る標準的な指標です。これらの推計は、アマゾンの主要事業セグメントが成長を続けても、キャッシュ創出を上回る可能性のある巨額の資本需要を反映しています。2027年と2028年の数値は会社 guidanceではなくアナリストの推計であり、これまでのアマゾン自身の開示は約2,200億ドルの2026年予算までにとどまっています。同社の今後の決算発表により、資本計画とキャッシュ創出が第2四半期の説明会で示された軌道に沿っているかが明らかになります。低い利益倍率と高い支出見通しの組み合わせは、同社株をめぐる財務見通しの変化を物語っています。