ソニーとTSMC、日本で60億ドル規模の合弁工場設立へ準備
重要ポイント
- •ソニーセミコンダクタソリューションズとTSMCは、5月8日に次世代CMOSイメージセンサーに特化した合弁会社設立に向けた非拘束MOUを締結し、ソニーが過半数を保有する。
- •熊本に建設される新工場は、需要に応じて段階的に実施される6,000億円超の投資となる可能性がある。
- •出資構成は、TSMCが支配株を持ち、ソニー、デンソー、トヨタが少数株主となる既存のJASM提携とは逆転する。
- •合弁会社は、ソニーの「フィジカルAI」分野の一環として、自動車向けセンサーやロボティクス用途を対象にし、従来のコンシューマー電子機器市場を超える。
- •正式契約の締結と通常のクロージング条件の充足が完了するまでは、合意は拘束力を持たない。

ソニーセミコンダクタソリューションズとTSMCは、次世代CMOSイメージセンサーの開発・製造に焦点を当てた合弁事業を立ち上げるため、法的拘束力のない基本合意書(MOU)を締結した。ソニーはすでに、スマートフォン、カメラ、さらに自動車・産業用途の拡大に使われるCMOSイメージセンサーで世界最大の供給元である。新施設は熊本県合志市に設置され、両社がJASMパートナーシップを通じて別の半導体工場をすでに運営している同じ地域に位置する。
5月8日に締結されたMOUは、日本の半導体製造における約60億ドル超の投資につながる可能性がある。新たな合弁会社ではソニーが過半数を保有し、TSMCが支配株を持つ既存のJASM体制とは大きく異なる構図となる。
この取引の内容
合弁会社は、熊本に新設されたソニーの製造施設を拠点に運営される。投資は、一度に大きな一括拠出を行うのではなく、市場需要に応じて段階的に実施される見通しだ。ソニーは既存の長崎工場でも追加の設備投資を計画しているが、これらの投資は日本政府の支援が前提となる。
消費者向け電子機器に加え、この提携はソニーが「フィジカルAI」と呼ぶ分野も対象にしている。これには自動車向けセンサーやロボティクスが含まれる。自動車メーカーが先進運転支援システムやカメラを新モデルに搭載する中で、車載イメージセンサーの需要は拡大しており、従来のコンシューマー向け電子機器を超えて顧客基盤が広がっている。
既存の関係を基盤に
ソニーとTSMCが熊本で協業するのは今回が初めてではない。両社はすでに、デンソーとトヨタを含む日本先進半導体製造、通称JASMで連携している。JASMは2024年後半に量産を開始し、TSMCにとって日本での初の本格的な製造拠点となった。
JASMではTSMCが過半数を保有し、ソニー、デンソー、トヨタは少数株主である。今回の新たな合弁会社ではこの構図が逆転し、ソニーが過半数株主となる。この体制により、ソニーは施設の生産内容と戦略方針をより直接的に管理できる。
日本が半導体に大きく賭ける理由
日本の半導体戦略は、1つの提携にとどまらない。日本はかつて半導体製造で世界をリードし、1980年代後半には世界生産の半分以上を占めていた。しかし、その後のシェアは台湾、韓国、中国本土への生産移転により、現在はおおむね1桁台まで低下している。
今回の合意は現時点ではなお非拘束であり、両社は正式契約を詰め、通常のクロージング条件を満たす必要がある。