山陰合同銀行、NTTデータとSecuritize Japanと提携し地域のトークン化資金調達を検討
重要ポイント
- •山陰合同銀行、NTTデータ、Securitize Japanの3社がトークン化証券プラットフォームを研究しており、同行は2026年度中の自社オンチェーン債発行を目指している。
- •数億円規模・投資単位数万円からの自己募集が計画されており、実現すれば日本の地方銀行による初のトークン化債券発行となる。
- •トークン化債券は、総額10億円以上・最低単位100万円が一般的な従来型社債より小規模な発行を可能にする。
- •コンソーシアムは、NTTデータの「地銀共同センター」を通じて中小企業や他の地方銀行へ、また2027年4月以降の規制改正次第で地方債へもプラットフォームを拡張する方針。
- •本取り組みは東京の金融セクター成長戦略と整合しており、8月にBOOSTRYインフラを利用して10億円のデジタル債を発行したトヨタファイナンスサービスの例に続くもの。

日本西部の山陰地域を対象とし、松江市に本店を置く地方銀行・山陰合同銀行は、ITサービス企業のNTTデータ、およびデジタル証券インフラ事業者で米国系デジタル資産企業Securitizeの日本法人であるSecuritize Japanと提携し、オンチェーン債券発行による地域資金調達の研究から着手して、トークン化証券プラットフォームを開発することを発表しました。3社はまず、同行が自ら債券型セキュリティトークンを発行し投資家に直接販売できるかどうかを検討し、初回発行は2026年度中を目標としています。
初回発行は数億円規模の自己募集(私募)と見込まれており、投資単位は数万円からで、個人投資家を対象としています。実現すれば、日本の地方銀行による初のトークン化債券発行となり、同行はその後、このインフラを法人顧客や地域の中小企業にも拡張する方針です。この種のトークン化証券は、2019年の金融商品取引法改正を通じて日本が整備した法制度、すなわち電子記録移転可能権利に関するルールの下に位置づけられ、ライセンスを保有したデジタル証券オファリングへの道を開いたものです。
デジタル社債は従来の発行プロセスをデジタル化し、所有権を分散型台帳に記録することで、名義管理や事務手続きを効率化します。この構造は小規模な個人向け販売に適しています。証券会社を通じて募集される従来型の社債は通常、総額10億円以上・最低単位100万円が求められるのに対し、トークン化債券は総額数億円、単価数万円台での発行が可能です。
この取り組みは官方政策とも整合しています。7月末に確定した東京の金融セクター成長戦略では、地域の中核企業の成長に資本市場を通じた資金調達支援が不可欠であると明記されており、金融庁も他の地方銀行による同様の取り組みを促すと見られています。山陰合同銀行は、約10社の顧客企業から年間合計数百億円規模の需要を見込んでおり、個別発行は数億円から約10億円程度と、従来型社債の発行規模を大きく下回るセグメントです。
個人投資家にとって大きな利便性は、証券口座を開設することなく、既存の銀行口座を通じて債券の購入・償還が可能な点です。発行体側は、保有者の識別情報をリアルタイムで把握できるようになり、商品割引やイベント参加などの特典を債券保有者に付与できるようになります。これは、トークン化された商品を通じてファンとのつながりを強めたい地元スポーツチームで期待されているモデルです。
中小企業と自治体に対応する新プラットフォーム、広がるトレンドに乗る
同行自身の発行にとどまらず、コンソーシアムはSecuritizeのデジタル証券プラットフォームを、13の地方銀行が利用するNTTデータの共用基幹システム「地銀共同センター」と統合し、最終的にネットワーク内の他の金融機関もトークン化債券を提供できるようにする計画です。このインフラは、2027年4月からデジタル地方債の発行が規制改正により認められ次第、地方債にも対応させる想定で、現在は高齢の資産保有層が中心の投資家基盤の拡大を目指すものです。
山陰合同銀行の取り組みは、証券会社の仲介を介さない直接的な社債発行という、日本で広がりつつあるトレンドを反映しています。8月にはトヨタファイナンスサービスが個人向けに総額10億円・最低単位10万円・標準クーポンに加えてトヨタグループの電子マネー特典付きのデジタル債を、野村ホールディングスが出資する東京のプラットフォームBOOSTRYのインフラを利用して発行すると発表しました。トヨタの発行も支えるBOOSTRYは、小売・決済・交通など、強力なブランドと独自の経済エコシステムを持つ大企業向けにデジタル債サービスを拡大しています。
これまで引受手数料や事務負担により発行をためらっていた中小企業にとって、トークン化発行は実質的により安価で柔軟な資金調達チャネルを開く可能性があります。また、地方銀行の共同センター・モデルが実現可能性を証明すれば、日本の地域金融において同様のプラットフォームが続々と登場する可能性があります。