JPYCがシリーズB拡張ラウンドで3800万ドル調達、AZ-COMマルワホールディングスが新規投資家として参画
重要ポイント
- •JPYCのシリーズBラウンドは複数回のクローズを経て総額約60億円(約3800万ドル)に達し、最新の拡張では物流企業AZ-COMマルワホールディングスから10億円の投資を受けた。
- •AZ-COMマルワホールディングスはJPYCステーブルコインを用い、業界の労働力不足の影響を受ける約2300人の取引先および個人事業主(トラック運転手を含む)に手数料や給与を支払う計画である。
- •JPYCのオンチェーン供給量は7月に20億円を突破し、同社は3年以内の供給量1兆円を目標としている。
- •日本政府は約3150億ドル規模のグローバル安定コイン市場においてドルが支配的であることに対抗する戦略的勢力として、円ペッグ安定コインを積極的に推進している。
- •JPYCは現在、ローソンのコンビニエンスストア、京都の一部自動販売機、お好み焼きチェーンの千房でリアルな決済利用のテストを実施している。

日本初のライセンス取得済み円ペッグ安定コインの発行主体である東京のJPYCは、シリーズB拡張ラウンドを完了し、総調達額を約60億円(約3800万ドル)とした。
今回のクローズは、日本最大級のトラッキング・倉庫ネットワークを運営し、Amazon Japanを主要顧客の一つに持つ物流企業AZ-COMマルワホールディングスから約10億円(約630万ドル)の投資を受けたことによる。AZ-COMマルワは今回の拡張ラウンドで新規投資家として参画した。
JPYCの背景
JPYCは2025年10月にローンチされた、日本円と1対1でペッグされたデジタルトークンである。日本初の登録済み円安定コインであり、各トークンは円預金および日本国債を準備資産として保有することで裏付けられている。日本の安定コイン規制の枠組みは、2023年6月に施行された改正資金決済法に由来し、安定コイン発行者に対するライセンス要件や当該トークンの法的分類を整備した。
シリーズB資金調達のタイムライン
シリーズBラウンドは複数回のクローズを経て実施された。第1回クローズは2月に行われ、Asteria Corporationがリードし、17.8億円(約1200万ドル)を調達した。同ラウンドの参加者は主に日本の企業群から構成されており、BitFlyer Holdings、明治安田生命保険、西日本旅客鉄道に関連する投資ビークルなどが含まれていた。
第2回クローズは4月に続き、追加で28億円を調達し、累計額は約46億円となった。このトランチのバッカーにはNCB Venture Capital、Metaplanet、住友生命が名を連ねた。
AZ-COMマルワホールディングスによる新たな10億円の投資が加わり、シリーズBラウンドの累計額は現在約60億円(約3800万ドル)となっている。
オンチェーン指標と普及状況
JPYCトークンのオンチェーン供給量は7月に20億円(約1236万ドル)を突破し、時価総額は約1628万ドルに達した。同社は3年以内に供給量1兆円を目標として掲げている。
JPYCは現在、ローソンのコンビニエンスストア店舗で安定コイン決済のテストを実施している。また、京都の一部の自動販売機やお好み焼きチェーンの千房でも決済が利用可能となっている。
給与支払いへの活用計画
AZ-COMマルワホールディングスは、株式投資にとどまらず、JPYCトークンを用いて約2300人の取引先および個人事業主(トラック運転手を含む)に手数料や給与を支払うことを計画している。安定コインによる決済は、従来の銀行振込に比べて決済が迅速であり、取引コストも低い。同社は、より迅速な決済インフラが新たな取引先の獲得につながり、日本の少子高齢化と残業規制の強化に起因するドライバー不足の解消に寄与すると期待している。日本のトラック輸送セクターは、2024年4月にいわゆる「2024年問題」としてドライバーの残業時間上限規制が発効して以来、特に厳しい状況にあり、限られたドライバー獲得競争が激化し、物流キャパシティへの懸念が高まっている。大規模に実装されれば、安定コインを用いた給与支払いは、物流事業者が報酬を差別化し、業務委託先を確保するための一つの手段となり得る。
日本のより広範な安定コイン戦略
日本政府は、現在約3150億ドルのグローバル安定コイン市場を支配するドル建てトークンに対抗する勢力として、円ペッグ安定コインを積極的に推進している。
JPYCのプレスリリースによると、政府の7月21日の経済政策パッケージには「オンチェーン・ファイナンス」が国家議題として盛り込まれた。与党の自由民主党は財務大臣に対し、アジア全域の決済インフラとして円安定コインを推進するよう求めている。これは、ドルペッグコインが決済を国内銀行の外に迂回させ、クロスボーダー決済において日本の貸手が周縁化されることを懸念する議員らの認識に基づくものでもある。また、この推進は、中国のデジタル人民元の実証実験やシンガポールの目的別マネーに関するProject Orchidなど、他のアジア経済圏が独自のデジタル通貨構想を前進させる中での動きでもある。
日本の三大銀行であるMUFG(NYSE: MUFG)、三井住友銀行、みずほ銀行は、合同で安定コインの実証実験を実施した。また、SBIグループは2026年6月に独自の円安定コインであるJPYSCを正式にローンチした。
JPYCは新たに調達した資金を、決済および送金機能の拡張と、Web3サービスとの統合の深化に充当する計画である。