購買力を削がれた日本の消費者、コンビニと経済の懸念材料に
重要ポイント
- •日本のコンビニの来店客数は15カ月連続で減少しており、9月は前年比3.8%減とパンデミック以降で最大の落ち込みとなった。
- •日本の基調インフレは9月、3年ぶりの速い年間ペースで上昇し日銀の2%目標を上回り、日銀は12月の利上げを示唆する可能性がある。
- •セブン&アイはブランド品より約20%安い低価格自社ブランドを投入し、ファミリーマートはパンやおにぎりを飲み物と一緒に買う際の朝の割引を計画している。
- •ディスカウント小売が伸びており、昨年トライホールディングスに買収されたセイユーは9月、既存店の来店客数が前年比6.9%増となった。
- •原油高を受けインフレ率は2027年前半に3%を超える見通しで、ファミリーマートとローソンは食品以外の収益源として数千店舗にゲーム機を設置している。

東京 — 43歳の関谷香奈さんは以前、仕事帰りに東京の駅の近くで食料品を買っていた。今では週末に30分以上車を走らせ、ディスカウントスーパーでまとめ買いをする。物価上昇に伴い買い物の習慣を見直す消費者が増える中、その一人だ。
「生活費の高騰で、コンビニにはまったく行かなくなりました」と彼女は言う。
関谷さんの買い物習慣の変化は、かつて盤石だった日本のコンビニにとってだけでなく、長年のデフレからようやく抜け出した経済にとっても懸念材料だ。日銀のデータによると、基調インフレは9月、3年ぶりの速い年間ペースで上昇し、日銀の2%目標を上回った。日銀は金曜日、12月にも利上げがあり得るとの見通しを示す可能性が高く、そうなれば経済は30年以上足を踏み入れていない領域に進むことになる。同行は2024年3月にネガティブ金利政策を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切って以降、段階的に金利を引き上げてきた。
「消費者の価格に対する目は極めて厳しくなっています」と、国内最大のコンビニチェーンであるセブン-イレブンの親会社セブン&アイ・ホールディングスでグループ商品戦略を統括する北村誠治氏は語る。同社は全国に約2万3000店舗を展開する。「節約志向は私たちの予想を超えて強まっています」
15カ月連続で来店客数が減少
日本フランチャイズチェーン協会のデータによると、コンビニの来店客数は15カ月連続で減少している。9月は前年比3.8%減と、新型コロナウイルス流行期の2021年9月以来の最大の落ち込みとなった。コンビニは中食、ATM、公共料金の支払い、宅配便の受け取りなどに24時間アクセスできる生活インフラとして日本の日常に組み込まれているだけに、この減少は際立っている。
人生で幅広い物価上昇を経験したことのない日本人消費者の節約志向の高まりは、より広範な経済問題を引き起こしかねない。
「個人消費が日本のGDPの約半分を占めるなか、家計の節約志向の強まりが経済全体の重荷になることが懸念されます」とみずほリサーチ&テクノロジーの池田亮平アナリストは言う。
日本企業は値上げに消極的だったことで知られ、アイスキャンディーを製造する赤城乳業は2016年、10円(6セント)の値上げを謝罪した。しかし、円安と原油高に見舞われた食品・飲料メーカーは2026年、2年連続で2万品目以上の値上げに踏み切った。
値上げラッシュの中、日本のコンビニ各社は、より安い代替品を求める消費者の圧迫に直面している。「ドラッグストアやミニスーパーといった競合がコストパフォーマンスを前面に出しています」と、伊藤忠商事傘下のファミリーマートの井上健司マネジャーは決算説明会で述べた。「お客様のニーズに十分応えきれていません」
関谷さんは、肉、野菜、酒などの購入で痛手を感じており、節約を最大化するため、ロピアとOKという2つのディスカウントスーパーを利用するようになったという。
コンビニへの来店を促すため、セブン&アイは、温めたチキンやベーコンなどを含む低価格の自社ブランド「セブン ザ・プライス」を投入し、ブランド品より約20%安い価格設定としている。先月、ファミリーマートは、パンやおにぎりをコーヒーなどの飲み物と一緒に購入する際に朝の割引を提供すると発表した。
勢いを増すディスカウンター
コンビニとは対照的に、価格競争に積極的な一部のスーパーでは来店客数が堅調に伸びている。昨年、ディスカウントチェーンのトライホールディングスに買収されたセイユーは9月、既存店の来店客数が前年比6.9%増となった。
「賃金の伸びがインフレに追いつかず、ディスカウント小売業に追い風となっています」とセイユーの楠野仁社長は言う。
ウォルマートは以前、セイユーの成功に苦戦し、その後、民間期間購入(PE)ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が買収したのちトライに売却した。九州を拠点とするトライは、人気の299円の豚カツ丼や199円のたまごサンドをセイユーの店舗に導入し、鮮肉や鮮魚の品ぞろえも強化している。
コンビニはミニスーパーからも脅かされており、トライは東京で小型店「トライGO」の出店を進め、日本最大の小売グループであるイオンは「まいばすけっと」チェーンを拡大している。
膨らむインフレ懸念
NLIリサーチの斎藤太郎主任研究員は、イラン戦争による原油高が電気・ガス料金に転嫁され、2027年前半にはインフレ率が3%を超える可能性があると指摘する。実質賃金も来年はマイナスに転じる可能性が高く、家計はさらに圧迫されかねないという。
人件費や光熱費の上昇でフランチャイズ加盟店が圧迫される中、コンビニ各社は食品以外で収益を伸ばす道を模索している。ファミリーマートは、雑誌やイートインのスペースを縮小し、約5000店舗にクレーンゲームやカプセルトイを設置する。三菱商事とKDDIが保有するローソンも約1500店舗にゲーム機を設置済みだ。
より広範な小売業界でも価格感度の高まりが見られる。ユニクロの親会社ファーストリテイリングは今週、11月10日から実施する予定だったカラーソックスの値上げを撤回したと発表した。
「靴下は生活必需品であるため、日本では価格改定を見直しました」とファーストリテイリングは述べた。
(1ドル=157.8100円)
出典:ロイター、BusinessWorld経由